2015/12/06 The report of World end

終末世界の住人たち
(富士山麓 とある湖畔の廃墟にて)


世界が崩壊したなんて言われてからどのくらいたつのだろう
20人以上いたはずの我々もいまでは001、003、028、030、040の5人だけとなってしまった
残り少ないガソリンで車を走らせて食料を探す日々が続いていた


かつては霊峰などといわれた山の麓に巨大な廃墟を発見した
2年前の失敗で3人を失ったあとは001にかわり003が指導者となり我々を仕切っている
「ここで必要な物資を探すのだ」
指導者の命令は絶対だ


一番若い040が建物の内部を探り始める
「何かがいる・・・」
そう言って彼は微動だにしなくなった


我々が入るまでじっと構えていた040だが1人で残されるのは不安なようで
一番最後に渋々と建物内に入ってきたのであった


「カメラだ!カメラが生きているぞ!」028が叫ぶ!
まさか誰かが監視しているのだろうか?


風を防げる場所を発見したので食事を摂ることにした
5日前から少しずつ味わっていた040のアレもとうとう食べ尽してしまったようだ
この建物の中で何かを見つけられなければまた2年前のような飢餓状態となるだろう
003は体温調節機能がおかしくなっている


001が持っていた最後の薬剤を皆に渡す
製薬会社に勤めていた彼の息子から入手したものらしいのだが
これを飲むと3日間は不眠不休で動けるヤバい薬だ


飲み込んだ瞬間に強烈な苦みと目の前がチカチカとするがそれもすぐに落ち着く


知識の無い我々には何が書いてあるのかは判らない
赤と白の傘のマークはどこかで見たことがあるのだが ・・・・思い出せない
001はヴェロニカがどうしたとか言っていた


あの薬はものの数分で効いてくる
力がみなぎり我々が無敵になるのを感じる


建物内部の奥を目指す
ここから先が尋常ではないことは廊下の壁の落書きからも判る
何と書いてあるかは写真の裏に記しておくのであとで見てくれ


「うゎ!アレはなんだ!」
040の叫び声に030がすぐさま反応した


建物の奥には無数の実験体が置かれていた
ライトの電池は貴重だ
何があるのか判ったらすぐに消さねばならない


「おっ○い・・・」
028の記憶と何かが符合したらしい
彼はしばらくその場から動かなかったが腰だけは激しく揺れていた


「何かの気配がする!」
そうつぶやく001の方を振り向くと彼の背後の影が動いたような気がした
あの時に撮った2枚目の写真はどこかにいってしまったのだろうか


迷路のような廃墟の中を泰然として突き進む003
030が先々を警戒しているが先頭を行く者の緊張感は計り知れないものがあるだろう


「これ以上は進めないようだ」
001が階下を見ながら静かにつぶやいた
地下水が湧き出ていて地下は4階までしか行かれなかった


地下にはめぼしい物が無い
001と003に険悪が雰囲気が現れる
この2人は以前から指導権を巡り対立している


廃墟の裏手には既に死滅している樹海が広がっていた
手がかりを探すため建物周辺を探っていたその時!


突然、大勢の兵隊たちが現れた
彼らはこの近辺を警護している自警団のようだ
流れ者の我々に敵意が無いことを知ると「同行を許可する」と言ってきた
我々が先に来ていたのにもかかわらずだ


どうやらここには我々が探している物はすでに無いようだ
仲間から落胆の雰囲気が漂っている


「アレはなんだ!」
もはや万事休すかと思われたその時、028が何かを見つけたようだ


兵隊たちの後に続き何食わぬ顔で廃墟内を捜索するがそれらしいものは見つからない
しかしある壁の前で003が立ち止まった


兵隊たちが他のフロアへ移っていくと003は満身の力を込めて壁を押し始めた
すると今までは見えなかった部屋への扉が開いたのである


あった!
そのブツは殺風景な部屋の奥に不自然なまでにたったひとつだけ置かれていたのである


ブツを見つけはしゃぐ028
030はその間も周囲への警護を怠らなかった
以前は要人警護をしていたというのは本当なのかもしれない


003の指示で040のバッグにブツを収納する
我々の命綱となるであろう大事なブツを一番の若手に任せるのである


003が休憩している隙に040が消えた!
「辺りを探せ!」
まさかブツを持ったまま逃げるつもるなのだろうか


「040の奴め!裏切ったなぁぁぁあ!」
003の怒号が廃墟の中に空しく響き渡るのであった


簡単には諦めるはずのない003はすぐさま別ルートから先回りしようとした
彼はこの施設を以前から知っていたような気がする


「040を見つけ出せ!俺が強制指導してやる!」
003の激しい怒りを目の当たりにした028は恐怖のあまり硬直している
彼の足元には生温かい水溜りが出来ていた


「うわぁぁぁあ!来るなぁ!」
車で逃げようとする040のライフルが火を噴いた
だがそれもほんの数発のことだった
今時、それほど多くの弾薬など残っているはずもないのである


車に飛び乗った003により040は引き吊り出される間もなく昇天してしまっていた
あの薬を使うと必ず人数が減るというのは本当だったようだ


もう5人で旅をしていた頃には戻れない